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【キャプテン翼考察】サッカーの醍醐味が分かる名勝負ベスト3②「明和FC×ふらの」

f:id:treikax:20170602023032j:plainphoto by chia ying Yang

第2位 明和FC×ふらの

3-2で明和FCが競り勝った試合(『キャプテン翼』単行本第7巻に掲載)

<「戦術・日向」の明和FCが、その日向を抑え込まれ…> 

 サッカーにおいて、チームワークと個人技はどちらも重要だ。チームワークのふらの、日向小次郎のほぼワンマンチームの明和FCとの全国サッカー少年大会の準決勝は、そうしたサッカーの本質を理解するうえでひとつのサンプルになるはずだ。

 

 日向の個人技に依存しすぎの明和FCは、ふらののチームワークに大苦戦。「戦術・日向」だけあって、その日向が抑え込まれると厳しかったのだ。

 

 どうにか日向は唯一無二のパートナー・沢田タケシのサポーターを得てゴールを奪うが、コンディション不良もあって時間の経過とともに精彩を欠いてしまう。チーム最大のゴールゲッターが不調の明和FCが二度も同点に追いつかれたのは、エース不在時の対策を怠っていたからに他ならない。

 

 振り返れば、明和FCは日向と沢田が不在だった埼玉県予選の準決勝・南武FC戦でも大苦戦。前半だけで0-3とリードされながら、そこから逆転できたのは後半から出場した日向と沢田が大車輪の活躍を見せたからだった。こうした前例があったにもかかわらず、ふらの戦でも同じような過ちを犯すのは吉良監督の指導力に問題があったと、そういう見方もできるかもしれない。

 

<試合の行方を決定付けたのは日向と若島津の“個の力”>

 攻めも守りも日向に依存しすぎの明和FCが、試合が進むにつれてふらのに押し込まれるようになるのはある意味、必然だった。

 

 前半から運動量がまったく落ちないふらのの強さを象徴するシーンが、2-2の局面で日向がパスカットしたボールを脇役の中の脇役である"ふらのの松田くん”が拾ってカウンターを仕掛ける場面だった。これはいくら有能なストライカーがひとりいても試合には勝てない、チームワークこそサッカーの醍醐味ということを示すひとつの事象と言えた。

 

 しかし、個の力もまたチームワークと同様に重要だと示したのがその後のPKのシーンだ。スコアは2-2、試合終了まで残り1分のところで、ふらのはセンターフォワードの小田がPKのチャンスを得る。ここで明和のGKとして登場したのが、若島津健だった。その若島津はふらのの松山光のPKをストップ。そこからカウンターを仕掛け、日向が決勝ゴールを決めた。若島津、日向の個人技が結局のところ、試合を決定付ける最大のファクターになったのだ。

 

 後に日向はチームワークの重要性に気づく。そこから彼のプレーの幅が広がったのは言うまでもない。ドリブル、シュートだけのストライカーが、駆け引きやパスなども覚え、より強力な点取り屋になった。日向の成長を語るうえで、このふらの戦は大きなターニングポイントになる試合だった。