サッカーの読みもの

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【U-20ワールドカップ】久保建英が南アフリカ戦で示したサッカーIQの高さ

<見ようによっては単なる横パスだが…>

 

 2017年5月21日、日本代表がU-20ワールドカップのグループリーグ初戦で南アフリカを下した。前半の7分にオウンゴールで先制を許したが、後半に入ると、48分に小川航基、72分に堂安律がそれぞれゴールを決めて逆転勝利を飾った。

 

 なかでも印象深かったのは日本の2点目。基本技術の高さを改めて見せつけた堂安はもちろん、玄人筋をも唸らせるアシストで日本の決勝ゴールを演出した久保建英のプレーが素晴らしかった。

 

 この日の久保は59分から途中出場。投入直後、南アフリカDFの意表を突くスルーパスで決定機を作り出すと、72分には堂安との素晴らしいコンビネーションから決勝ゴールをアシストするのだが、そのアシストとなった“堂安へのパス”が一級品だった。

 

 見ようによっては、単なる横パスである。しかし、このパスが実は奥深い。まず、パスを出す直前の久保はボールを見ていない。そして、ゴール正面に待ち構えている小川に向け、いかにも「パスを出しますよ」というような合図を視線で送る。

 

 当然ながら、この視線につられた南アフリカのDFは小川の動きをケアする。しかし、実際に久保がパスを出した相手は、ゴール前に走り込んできた堂安だった。

 

 しかも、サッカー用語で言えばこの「マイナスのクロス」は堂安にとって非常に蹴りやすいボールだった。「決めるだけだった」という堂安のコメントからも分かるように、まさに絶妙だったのだ。

 

<真横のクロスより、マイナスのそれのほうがはるかに合わせやすい> 

 

 サッカーにおいては大抵の場合、真横から飛んでくるクロスよりも、マイナス気味のそれに合わせるほうがはるかに簡単。横パスより、落とされたボールのほうが断然シュートしやすいのはサッカー経験者なら分かるだろう。そうした基礎的かつ合理的なことを理解しているからこそ、久保はあそこで“マイナスのクロス”を選択したのではないか。

 

 敵をだますノールックで、しかも丁寧。それをU-20ワールドカップの舞台で実にあっさりとやってのけてしまうのだから、久保はやはり神童だ。

 

 あの得点シーンでなにより素晴らしかったのは、状況判断。相手の動きを読みつつ、瞬時にベストなプレーを導き出した久保のサッカーIQ(先を読んだり、瞬時の判断力に優れた能力)は本物だ。

 

 可能なら、あの決勝ゴールの場面を動画などで見返してもらいたい。単なる上手いパスではなく、いかに計算し尽くされたパスだったかが分かるはずだ。