サッカーの読みもの

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【Jリーグ】近年のJ1リーグでもっともスリリングなクラブは?

守ることが反則などというルールはサッカーにない

 

 勝負強い鹿島アントラーズ、攻撃的なサッカーを展開する浦和レッズも素晴らしいクラブだが、個人的に興味深いのはヴァンフォーレ甲府だ。

 

 近年のJリーグでどちらかと言えば脇役の甲府がなぜ興味深いのか。優勝候補でもなく、決して面白いサッカーを披露しているわけでもない。しかし、彼らには確固たる信念がある。どんなことをしてもJ1残留を成し遂げようという確固たる信念がだ。

 

 甲府は12年にJ2を制してJ1昇格を果たすと、13年は15位、14年は13位、2ステージになった15年は年間順位が13位、続く16年は同14位と、このトップリーグで生き残り続けている。降格候補の本命と目されている今年も、J1の12試合を終えて3勝4分5敗の14位と健闘しているのだ。

 

 落ちそうで、降格しない。これはある意味、スリリングだ。優勝争いに絡んでくることはないが、一方で残留争いを盛り上げている主役が甲府なのである。もはやトレードマークとなっている「カウンター志向のサッカー」は、時に「アンチフットボール」とか「腰抜けのサッカー」などと批判されることもあるが、果たして何がいけないのか。

 

 守ることが反則などというルールはサッカーにない。弱者には弱者の戦い方があるのだから、なにも恥じることはないだろう。甲府甲府で停滞感を打破しようと、新たなスタイルの確立を目指しているようだが、J1残留を最大の目標にしてカウンターサッカーにこだわるクラブがあってもいいと思う。

 

プロビンチャの雄になってもらいたい>

 

 ヨーロッパにも、優勝を目標にせず、トップリーグに生き残ることだけを考えて戦うクラブがたくさんある。そういうチームに甲府がなってもいいのではないか。俗に言う、プロビンチャ(地方クラブという意味)の雄に──。

 

 たいした戦力も持たず、解説者や識者には降格候補に挙げられてしまう。それでもめげることなく、ひとつひとつ勝点を積み上げていく甲府の粘り強さは賞賛に値するものだ。このところ勝ち星から見放されているものの、ここから粘り強く戦い、今季も下馬評を覆して残留を果たすのか。

 

 甲府のサポーターではないが、決して財政的に豊かではなく、戦力も乏しい甲府がこの4年間、J1を生き抜いている姿には感銘を受ける。

 

 落ちそうで、降格しない。そんなスリリングなドラマもこれかも提供してもらいたい。