【キャプテン翼考察】サッカーの本質をつく名言⓵ ラモン・ビクトリーノ編
photo by chia ying Yang
キャプテン翼のセリフのなかで「サッカーの本質をつく名言」がいくつもある。そのひとつが、ウルグアイの黒豹ラモン・ビクトリーノが言った次のセリフだ。
「番狂わせっていうのは二度もつづきやしねえ。
まぎれもない。これは日本の実力だ‼」
主人公の大空翼をはじめ、岬太郎、日向小次郎などが日本代表として世界の強豪国と戦ったのが「フランス国際ジュニアユース編」である。
大会前、優勝候補の本命と言われたのが“皇帝”カール・ハインツ・シュナイダーを擁する西ドイツで、それに次ぐのが開催国のフランス、アルゼンチン、イタリア、ウルグアイといった国々だった。日本はいわばアウトサイダーで、まったくと言っていいほど期待されていなかった。しかも、日本がグループリーグで同居したのは、鉄壁のGKジノ・ヘルナンデスがゴールを死守するイタリア、天才ファン・ディアスが中心軸のアルゼンチンだった。
各グループから決勝トーナメントに進めるのは1か国。つまり、日本、イタリア、アルゼンチンのグループから日本が勝ち上がると予想した人は少なかった(もちろんキャプテン翼の読者は別)。
ところが、である。日本は文字通りの快進撃を見せるのだ。イタリアとの初戦、0-1とリードされる苦しい展開ながらも、翼と日向のゴールで逆転勝ち。ただ、この時点ではスタジアムの観客に「番狂わせ」と捉えられていた。
続くグループリーグ第2戦、日本の相手は、イタリアを5-0で下したアルゼンチン。ディアスの圧倒的な個人技に翻ろうされる日本だが、この試合も翼、三杉淳らの活躍で5-4の逆転勝ちを収めた。日本が5-4とリードした時点で、この試合を観戦していたウルグアイのメンバーのひとりが「これは日本。イタリア戦につづき、またも大番狂わせをえんじるぞ」と言った。
これに反応してビクトリーノが放ったのが冒頭のセリフである。
「番狂わせっていうのは二度もつづきやしねえ。
まぎれもない。これは日本の実力だ‼」
結局、日本は準決勝でフランスをPK戦で、決勝では西ドイツを3-2で破り優勝を果たす。ビクトリーノの見立ては正しかったということになる。
番狂わせは、すなわち奇跡ということでもある。ロシア・ワールドカップに臨む日本代表監督の西野朗さんは、かつてオリンピック代表を率いてブラジル代表を破る大番狂わせを演じている(俗にいうマイアミの奇跡)。あまり期待されていない現状で、例えば西野監督がワールドカップのコロンビアとの初戦で日本を奇跡的な勝利に導いたとする。ビクトリーノの言葉を借りれば、こうなる。
「番狂わせっていうのは二度もつづきやしねえ。
まぎれもない。これは西野監督の実力だ‼」
逆風に晒されている西野監督だが、ワールドカップで結果を残せば文字通り日本サッカー史に名を刻む英雄になれる。